2018年東北大学理系数学大問2

得意(笑)程度の実力の確率です。

2018年東北大学理系数学大問2
n2以上、a1以上の整数とする。箱の中に、1からnまでの番号札がそれぞれ1枚ずつ、合計n枚入っている。この箱から、1枚の札を無作為に取り出して元に戻す、という志向をa回繰り返す。ちょうどa回目の試行でそれまでに取り出した札に書かれた数の和がはじめてn以上となる確率をp(a)とする。
(1)p(1)p(n)を求めよ。
(2)p(2)を求めよ。
(3)n3以上の整数のときp(3)を求めよ。

文系数学にも類題が出題されています。
(2)で間違えないようにすることがポイントです。そうしたら、あとは(3)まで一気に得点が獲得できます。こちらも大問1に続いて落としたくない易問。


(考察)
(1)続く小問のヒントになる問題。落とせません。
(2)ポイントは数の和がn以上になる確率であり、nになる確率ではないということです。落とすと雪崩を起こします。
(3)(2)の考え方をそのまま応用してあげればOK。2回目までの和さえ決めてしまえば3枚目に何を引けばよいかが決まるので、2回目までの和で場合分けしてしまえばよいです。


(解答)
(1)
p(1)とは、1回目に取り出したカードがn以上になる確率。つまり、1回目にnが書かれたカードを取り出す確率である。
よって、求める確率は\begin{eqnarray}\frac{1}{n}\end{eqnarray}

またp(n)とは、n回目までに取り出したカードの和がn以上になる確率。つまり、n回の試行すべてにおいて1を取り出す確率である。
よって、求める確率は\begin{eqnarray}(\frac{1}{n})^n\end{eqnarray}

(2)
p(2)とは、2回目までに取り出したカードの和がn以上になる確率。
1回目にkを取り出した場合、2回目はn,n-1,n-2,\cdots,n-k(k+1)種類のカードのいずれかを取り出せばよい。(1\le k \le n-1)
つまり、1回目にkを取り出したときに、2回目までに取り出したカードの和がn以上になる確率は、\begin{eqnarray}\frac{1}{n}\cdot\frac{k+1}{n}=\frac{k+1}{n^2}\end{eqnarray}
p(2)は、1回目に1を取り出す場合と、2を取り出す場合と、\cdotsn-1を取り出す場合とがあるから
    \begin{eqnarray}\displaystyle p(2)&=&\frac{1+1}{n^2}+\frac{2+1}{n^2}+\cdots\frac{(n-1)+1}{n^2}\\
&=&\sum_{k=1}^{n-1}\frac{k+1}{n^2}\\
&=&\frac{1}{n^2}\{\frac{1}{2}(n-1)n+(n-1)\}\\
&=&\frac{(n-1)(n+2)}{2n^2}\end{eqnarray}

(3)
p(3)とは、3回目までに取り出したカードの和がn以上になる確率。
2回目までに取り出したカードの和がkである確率をq(k)とおくと、
2回目までに取り出したカードの和がkであるときに、3回目取り出したカードまでの和がn以上になるためには(2)と同様にn,n-1,n-2,\cdots,n-k(k+1)種類のカードのいずれかを取り出せばよい。(2\le k \le n-1)
よって、2回目までに取り出したカードの和がkであるとき、3回目までに取り出したカードの和がn以上になる確率は\begin{eqnarray}q(k)\cdot \frac{k+1}{n}\end{eqnarray}

ここでq(k)を求める。
カードの取り出し方は(1回目,2回目)=(1,k-1),(2,k-2),\cdots (k-1,1)k-1通りだから
    \begin{eqnarray}q(k)=\frac{k-1}{n^2}\end{eqnarray}
よって
    \begin{eqnarray}\displaystyle p(3)&=&\sum_{k=2}^{n-1}q(k)\frac{k+1}{n}\\
&=&\sum_{k=2}^{n-1}\frac{k-1}{n^2}\cdot\frac{k+1}{n}\\
&=&\frac{1}{n^3}\sum_{k=2}^{n-1}(k-1)(k+1)\\
&=&\frac{1}{n^3}\{\sum_{k=1}^{n-1}(k-1)(k+1)-(1-1)(1+1)\}\\
&=&\frac{1}{n^3}\sum_{k=1}^{n-1}(k-1)(k+1)\\
&=&\frac{1}{n^3}\sum_{k=1}^{n-1}(k^2-1)\\
&=&\frac{1}{n^3}\{\frac{1}{6}(n-1)n(2n-1)-(n-1)\}\\
&=&\frac{(n-1)(2n^2-n+6)}{6n^3}\\
&=&\frac{(n-2)(n-1)(2n+3)}{6n^3}
\end{eqnarray}



(3)の最後のシグマ変形では、
    (k=2からk=n-1までの和)=(k=1からk=n-1までの和)-(k=1の部分)
という考え方で変形しました。
他にもこんな変形でもよいです
(別解)
    \begin{eqnarray}\displaystyle p(3)&=&\frac{1}{n^3}\sum_{k=2}^{n-1}(k-1)(k+1)\end{eqnarray}
ここで、l=k-1とおくと、l1からn-2までを動き、(k-1)(k+1)=l(l+2)となるから
    \begin{eqnarray}\displaystyle p(3)&=&\frac{1}{n^3}\sum_{k=2}^{n-1}(k-1)(k+1)\\
&=&\frac{1}{n^3}\sum_{l=1}^{n-2}l(l+2)\\
&=&\frac{1}{n^3}\sum_{l=1}^{n-2}(l^2+2l)\\
&=&\frac{1}{n^3}\{\frac{1}{6}(n-2)(n-1)(2n-3)+(n-2)(n-1)\}\\
&=&\frac{(n-2)(n-1)}{6n^3}(2n-3+6)\\
&=&\frac{(n-2)(n-1)(2n+3)}{6n^3}
\end{eqnarray}

この変形も覚えておくとよいですね。今回のパターンでは因数分解の必要がほとんどなくなりました。

今年は東北大にしては難化したので、大問1と合わせて完答しておきたい問題でした。