虫は嫌われる存在だ。僕も嫌いだ。

今日の帰りの電車で僕のバッグに5,6cmくらいの小さい蜂のような虫が止まった。その時寝ていたので隣の友達に言われて気づいたのだが、まぁ驚いたものだ。

とりあえず観察して、この後どうするのかを考えることにした。
周りの乗客の目線がみんな僕のバッグの蜂に向かっていた。
二つとなりの男子高校生と思われる人はデコピンのハンドサインを送ってきたが、流石に蜂が可哀想なので僕には無理だった。

そのあと5分くらいたっただろうか。何を血迷ったのか蜂ではなくバッグの蜂近くのところをデコピンしてしまった。もちろん蜂は僕のバッグからは落ちて電車の床に落ちた。

さぁここからが問題だ。僕の降りる駅までは10分ほど。周りの乗客はみんな蜂を見ている。おそらくあの時世界で一番注目されていた蜂だろう。そして何故かその蜂は一切飛ぼうとせずに床を歩き続けていた。

僕が起きてから10分は経っていただろうし、段々電車内に謎の一体感が生まれていた。
蜂を知らない乗客が歩いてくる度にみんなドキドキして、蜂ギリギリに足をおいたときは「あぁっ」と声が漏れたりしていた。

その時だった。

「ブチィッ」

と嫌な音がした。そう、一人の乗客が蜂を踏んでしまったのだ。
幸いにも蜂は辛そうにも生きていて、ホッとした。結局、また違う乗客が蜂を蹴飛ばしてしまい、話は終わる。

何気ないことからでも一体感が生まれるのだなぁ、と感動した自分がいた。