2018年北海道大学理系数学大問4

学習指導要領の変更によりカテゴリの「数Ⅰ」「数Ⅱ」とかが意味を成さなくなってしまうことに気づいてしまいました

2018年北海道大学理系数学大問4
座標平面上に3点\begin{eqnarray}\mathrm{O}(0,0),\mathrm{A}(\frac{15}{2},0),\mathrm{B}(11,11)\end{eqnarray}がある。条件
    \mathrm{BQ} \ge \mathrm{OQ} \ge 2\mathrm{AQ}
を満たす点\mathrm{Q}(x,y)の全体をDとする。
(1)Dを座標平面上に図示せよ。また\mathrm{BQ}=\mathrm{OQ}=2\mathrm{AQ}となるすべての点\mathrm{Q}の座標を求めよ。
(2) 0 < p \le 11とし、\mathrm{P}を点(p,11)とする。条件\mathrm{OQ} \ge \mathrm{PQ}を満たすDの点\mathrm{Q}が存在するようなpの値の範囲を求めよ。


(考察)
(1)\mathrm{Q}の座標が与えられているのがなんとも優しい。素直に計算してあげればOK
(2)難しい。とりあえず条件を求めるところまでできれば十分な部分点がもらえそうです。本番は捨ててもよいかもしれませんね。図示とかしてるし線形計画法的な感じかな~と思いつくかどうか。


(解答)
(1)
\mathrm{BQ} \ge \mathrm{OQ} \ge 2\mathrm{AQ}で、すべて正だから
    \mathrm{BQ}^2 \ge \mathrm{OQ}^2 \ge 4\mathrm{AQ}^2
距離の公式をそのまま当てはめると
    \begin{eqnarray}(x-11)^2+(y-11)^2 \ge x^2+y^2 \ge 4\{(x-\frac{15}{2})^2+y^2\}\end{eqnarray}
これを整理すると
    y\le -x+11,(x-10)^2+y^2 \le 25
これらを図示すると
    

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濃い色の部分が求める範囲

等号成立は2つのグラフの交点。円を式に直線の式を代入すると
    \begin{eqnarray}(x-10)^2+(-x+11)^2&=&25\\
2x^2-42x+196&=&0\\
x-21x+98&=&0\\
(x-7)(x-14)&=&0\\
x&=&7,14
\end{eqnarray}
これを直線の式に代入すると(7,4),(14,-3)が得られる。


(2)
\mathrm{OQ} \ge \mathrm{PQ}で、両辺正より\mathrm{OQ}^2 \ge \mathrm{PQ}^2
距離の公式をあてはめて
    \begin{eqnarray}x^2+y^2 &\ge& (x-p)^2+(y-11)^2\\
22y &\ge& -2px+p^2+121\\
y&\ge& -\frac{p}{11}x+\frac{p^2+121}{22}\end{eqnarray}


(考察2)
ここで直線の式が出てきましたが、線形計画法などでも注意が必要なのが、直線の傾きです。
今基準となる傾きはDで使われている直線の傾きである「-1」です。

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例1:傾き-10/11
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例2:傾き-3(実際の直線とは異なります)
今回はp0  < p\le 11という範囲のもとで動くので傾き\begin{eqnarray}-\frac{p}{11}\end{eqnarray}\begin{eqnarray}-1 \le -\frac{p}{11} <0\end{eqnarray}という範囲で動きます。平たく言えば、Dの直線部分よりも寝ている直線しか出来ないわけですね。
そのため、鉛筆などを寝かせて動かしてあげると少しわかりやすくなるのですが、今求めた条件を満たす点が存在する条件は(1)で求めた点のうち(7,4)のほうが求めた条件に含まれるということが分かります。
これはあくまで条件の直線部分の傾きが寝ているからの話であり、上の例2はそれが成り立っていないことが分かると思います。(その場合は(14,-3)が含まれるというのが条件になります)


(解答続き)
問題のpの範囲から\begin{eqnarray}-1 \le -\frac{p}{11} <0\end{eqnarray}がわかる。
よって
    D内の点で条件を満たす点が存在する\Leftrightarrow(7,4)\begin{eqnarray}y&\ge& -\frac{p}{11}x+\frac{p^2+121}{22}\end{eqnarray}に含まれる
となる。
つまり
    \begin{eqnarray}4&\ge&-\frac{p}{11}\cdot 7+\frac{p^2+121}{22}\\
88&\ge&-14p+p^2+121\\
p^2-14p+33&\le& 0\\
(p-11)(p-3)&\le& 0\\
\end{eqnarray}
つまり、求める範囲は3\le p\le 11



(2)は試験場での緊張感などを考慮すると思いつくのは難しいかもしれません。なので、あまり合否を分ける問題にはならなかったかもしれませんね。
ですが、この考え方は線形計画法でよく用いますので絶対に覚えておいて損はないです。

北大の理系数学もあと一問ですね。北大が終わったら東北大、一橋大、東工大、その他医大とかもまとめたいものですが。果たして。